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大阪大学 基礎工学研究科 機能創成専攻 非線形力学領域, 准教授

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〒560-8531 豊中市待兼山町1-3 大阪大学 基礎工学研究科 機能創成専攻 非線形力学領域
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研究テーマ:非平衡現象

我々の身の回りの物質は、力を加えると変形、流動、摩擦、破壊などの、物質特有の様々な特性を示します。 これらの物質の力学的な特性は、我々の身の回りにおいて様々な形で利用されているのですが、 そうした力学的な特性にはまだまだ未解明な面があります。(具体的な現象は下記の研究課題を参照)
これらの力学特性に関連した現象は、多くの場合平衡状態から遠くはなれた非平衡状態であらわれるもので、 既存の物性研究の基礎となっている平衡熱・統計力学をそのまま適用することはできません。 こうした、物質の動きに関連した非線形、非平衡現象をシミュレーションや解析的手法を用いて、 理論的に研究しています。

研究課題

研究課題の例を3つ挙げますが、これ以にも様々な力学的な特性に関連した現象に興味を持っています。

砂・粉の流れ

物体は運動の様式によって流体か固体に分類されると思われている。しかし、身の回りの物質をみてみると 流体とも固体とも分類できないような物質が多々存在することがわかる。
その一つの例は、砂や粉などの粒子状の物質が集まってできた粉体である。これらの物質を構成する粒子自体は固体であるが、 それらの集合体である粉体は状況によって流体としても固体としても振る舞う。 例えば、砂はシャベルなどですくってバケツなどの容器に流し入れることができる。 この事例を見れば、砂は流体として分類できるように思われる。 ところが、上手に扱えば、砂は大きな城などを作ることもできる。 こうした砂の造形物は、明らかに固有の形を持っており、固体として振る舞っている。 また、下の図のような砂時計の流れを見てみると、 砂時計の下部に形成される砂山の底面では砂は流れず固体として振る舞っている一方、 砂山の表面では砂は定常的な流れを作って移動しており、流体として振る舞っていることが分かる。
固体ならば弾性力学、流体ならば流体力学を用いてその運動を理論的に予測することができるが、 それらのどちらの面も併せ持つ粉体の運動は、未だに理論的な取り扱いが分かっていない未解明の現象である。 こうした身近にあるにもかかわらずよく理解されていない粉体の運動を、 物性物理的な観点から研究しています。

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ペーストの乾燥破壊

粉と水を混ぜたペーストは容器に入れて乾燥させるひび割れが表面に入る。 しかし、このペーストを乾燥させる前に容器を揺すると、その揺すり方に応じて、 ひび割れが下の図のように様々に変化する。 この実験は非常に単純な設定にも関わらず、その結果は非自明で、 そのメカニズムも明らかになっていない。 こうしたある種の破壊に関する現象に関して、 理論物理的な視点から研究を行っています。

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摩擦現象

摩擦は我々の日常の様々な場面で関わる現象である。 特に、高校物理の早い段階で、摩擦を習うことから、 その振る舞いや挙動は自明のものと思われる場合も多いかもしれないが、 実は、その発生原因や理論的な取り扱いは未だに明らかになっていない。
例えば、高校物理ではアモントン・クーロンの法則という摩擦則を習うが、 それはある限定的な場合にしか成立しない経験則で、 その成立原因や適応範囲などは明らかになっていない。 こうした、古典的かつ未解明の摩擦現象に対して、 数値的、解析ていなアプローチで研究を行っている。

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